3.噂と違うアイツ
「越前君、千石とつきあってるんだって?」
タオルを頭に被ってベンチで寝そべっていた所、頭の上から振って沸いたような声がしたので身体を起こした。
誰かと思ったら、先輩の不二だ。いつもの捉え所が
ないような
不思議な微笑を浮かべている。
「なんすか、それ。一体どこから来た情報っスか?」
油断出来ないなと心構えをしながら、不二の方へ顔を上げる。
どうしても知りたい?と迫力のある笑顔で不二に聞かれて、すぐさま首を横に振った。余計なこ
とも聞かれたくないけど、余計な事は尚更知らない方がいいから
だ。
「千石は、女好きで有名だよ。それくらいは、君でも知ってるよね?」
探るような不二の眼を見て、不承不承頷く。あることないこと後で噂されるなら、いま事実を話しておいた方がまだいい。
「少しだけ。俺も、噂は聞いてたんですけど、なんか違うんスよ」
「そう? いまだけかもしれないよ」
自分で聞いておきながら、返って来るリョーマの返答にそれ程興味の無さそうな素振りだ。どんな答えを期待されていたのか、これだからよくわからない。
隙
間
が
空い
たリョーマの隣に不二はすっと自然に腰を下ろして、乾いた喉に水分を補給する。
「おチビも、ついに大人になっちゃったんだねー。俺、なんか寂しいな」
それまで黙って、不二の秘密情報を隣で聞いていた菊丸がリョーマの背中にがばっと貼りつく。
まだ接触されるだけでうんざりするような季節ではないけれど、
べたべたされるのはあまり好
きじゃな
い。菊丸を引き剥がそうと、身体を捩らせる。
「なんのことです?」
首にかかる両手を外そうとすると、するっと首に菊丸の右腕が巻きついた。ちょっかいをかけられる絶好のチャンスと思っているのか、楽しくてたまらないと
い
う顔をぐいぐいと側に近づけてくる。こんな風に人懐っこくてすぐにくっつきたがる所が、千石に似ていると時々思う。
「恥ずかしいからって、先輩の俺にまで隠さなくてもいいじゃん。俺は、おチビの幸せを祝福するよ」
なんのことだかわからないと眉を顰めると、リョーマの耳元で低い声でぼそりと囁く。
「……もう、ヤっちゃったんだろ?」
「はぁ!? 変なこと言わないでくださいよ。そもそも、正式につきあってるなんて言ってませんから」
唐突に下世話な事を聞かれたので、声のトーンが跳ねあがる。菊丸の手をつかんで自分の頭を抜いて、肘打ちもおまけにつけて思いっきり振り払った。
「別にー、変じゃないって。恋人同士なら、そういう事があってもさ」
いつもリョーマに絡んではお返しがやって来るので、菊丸はその位慣れたものだ。急所を咄嗟に避けたので、ダメージが回復するのも早かった。
だよねと、不
二
に
も相槌を求める。そのストレートさに苦笑しながら、不二も同意した。
そういえば、初デートじゃなくて、初めて一緒に遊びに行った日にキスされてから、一ヶ月位立つのに何にもなかった。
あれから気軽に遊んだり、一緒に帰るようにはなったけど、世間で言う恋人として正式につきあっているっていうのとは、ちょっと違うかもしれない。
あっても、軽いハグくらいだ。それだって、リョーマが嫌だって拒否すればそれ以上の事はして来ない。菊丸先輩との勝手に取られるスキンシップの方が、頻度
で
言うなら多いかもしれない。
噂通りなら、手が早いはずだけど、どうして?
別に、なにかして欲しいっていうわけじゃないけど。俺だけ違うのって、気になるし……。俺、誰に言い訳して
るんだろ。
いつの間にか胸元にまでじんわりと垂れてきた汗を拭こうと横のタオルに手を伸ばした時、二人に注目されていることに気がつく。隣に眼を走らせると、自
然な会話をしているように装っているみたいだけど、その内容がまったく噛みあっ
ていない。
そんな事にも気づかない位、自分の考えに長
い間没頭していたってことで──。先輩達にからかわれるネタを提供してしまったことに気づいて、すっぱりと考えることを諦めた。
日光の傾きの関係で日陰が無くなってしまったのを機会に、タオルを残してベンチから立
ちあがった。
「リョーマく〜ん。もうすぐ終わる?」
フェンスを挟んだ向かいに、さっきまで話題にしていた千石がやって来ていた。リョーマの姿を見かけて、笑顔で手を振ってくる。
背後にいる先輩達の視線をプレッシャーに感じる。自分と千石のやり取りに先刻の会話からして興味津々だということは、間違いないからだ。小走りでフェン
スまで駆けよって、千石をドスの効いた厳しい声で咎める。
「練習中は、俺に声かけないでって言わなかった?」
からかわれるのが嫌なのか無愛想な顔で、右手でフェンスを軋ませながら千石をじろりと下からねめつける。
「リョーマくんの顔見たら、ついね。いやぁ、メンゴメンゴ」
カバンを肩から下ろしながら、リョーマの不機嫌な顔など全く気にしてもいないような飄々とした態度で千石が謝る。
「笑って誤魔化そうとしても、ダメ。静かにしてるからって、約束だったじゃん」
その様に毒気を抜かれて、ぶっきらぼうな態度に戻る。それでも、ポーズはまだ自分は不機嫌であると千石に見せかけている。
「ごめん。ちゃんと、大人しくしてるから。ねっ、お願い!」
手をあわせてまで謝る千石を見て、先輩達へのやつあたりをやって来た千石に全部ぶつけたようなものだったので、もうすっかり怒りは溶けていた。
「勝手にすれば。俺、まだ練習あるから」
言い終えて、くるりと千石に背を向けた。
少し冷たく言い過ぎたかな。
そっと振り返ってみようかと身体を斜に歪めると、自分の姿を捉えようとする千石の熱っぽい真剣な眼差しに気がついた。
感染でもしたかのように、カッと身体が熱くなる。普段意識なんてしたことのない耳の血管が激しく脈動しているのを、現実に感じたような気がした。誰かに
指摘されたら解って
しまう位、いまの自分の耳は赤くなってい
るかもしれない。
同じ意味で応えられる気がしなくて、そのまま振り返ることは出来な
かった。
「──あのさ、練習見に来てもいい? 偵察とかそういうんじゃなくて、リョーマくんが練習している所見たいんだ。大人しくしてるから見に来てもいい?」
「偵察とか慣れてるし、静かに見てるだけならいいと思うけど。だからって、自分の所さぼるなよ」
毎回毎回自分を迎えに来るのがやけに早い千石を、リョーマは疑惑の眼で見た。
「今日は、早く終わったんだよ」
「ホントに?」
「やだな。ほんとに、ほんとだって。南に確認してくれても、構わないよ」
受話ボタンさえ押せば、南にすぐに掛けられる携帯を差し出される。そうまでされると、疑っていた自分の方が悪い気がしてきた。
「わかった。アンタのこと信用する。その代わり、大人しく見ててよね」
「うん。リョーマくんだけを、じっくり見てるから安心して。オレの眼には、リョーマくんしか映らないからね!」
「見てなくていい!」
冗談混じりに言われたから本気にしてなかったのに、あんな眼差しで見られていたなんて気がつかなかった。
──俺のことを、あの人は本気で好きなのかもしれない。
告白を信用していなかった訳じゃないけど、実感としてはまだ出来ていなかった。こんな風に不意打ち
で千石の気持ちを知らされるなんて、思ってもいなかったから恥ずかしい。
俺、自意識過剰かもしれない。言われた訳じゃないし、たまたまかもしれないのに……。
皆の前に顔を出す前に、頭を冷やしてから行くことにした。
部活終わりの生徒がちらほらと帰っていく位で、校門に人気は少ない。後少しで、夕陽が現れそうな時間だ。
「そろそろ、桃もお役ご免かもな」
千石の隣を歩くリョーマを見ながら、校門の辺りで菊丸が唐突に言い出した。
「今日は、本当に送っていかなくていいのかよ?」
カバンが重すぎて片方に傾いたので籠の重心を直しながら、桃城が確認するように尋ねる。
にやにやと物分りのいい笑みを浮かべた菊丸が、桃城とリョーマの
間
に身軽に割って入る。
「桃、邪魔しちゃ駄目だよん。二人で仲良く帰るんだからさ」
まだ千石とリョーマの関係がよくわからないながらも、先輩の言うことなので桃城は素直に頷いた。
「オレが送れない時は、リョーマくんのこと今まで通りよろしくね」
何がしかのフォローのつもりなのか、ニコッと愛想のいい笑顔を千石が見せる。
「いよいよ、越前のアッシーみたいじゃないっスか。勘弁してくださいよ」
逆効果だったらしく、桃城は苦りきった顔をする。
「そんなことないって、ねえ?」
急いで手を振って、笑顔で誤魔化す。千石は首を傾げ、この場に相応しい相槌を返してくれるようにリョーマに求めた。
「多分」
あっさりとクールな答えが返ってくる。それがあまりにもリョーマらしい答えで、皆は笑い出した。
「リョーマくんってば、もう!」
「大丈夫っすよ。コイツが素直じゃない奴って、俺だってわかってますから」
涼しい顔ですっ呆けている後輩の頭を、桃城は拳で荒めにいたぶる。
「ちょっ、桃先輩、やめてください!」
桃城の手から逃れて、千石の後に隠れる。乱れた髪の毛を、手癖で直した。
「じゃーな。おチビ。恋人と仲良くな」
先輩の激励なと、菊丸はリョーマの肩をポンポンと気安く叩く。
「大きなお世話っス」
そんなことを奨励されても恥ずかしいだけなので、ツンと顔を背ける。
「まあまあ、祝福されるのは嬉しい事だよ。ありがとー。菊丸くん」
リョーマを宥めながら、反対方向に帰る菊丸と不二の方へ手を振った。
先輩達への挨拶もそっちのけで、「余計なこと言うなよ」と言って、リョーマは千石の膝に乱暴に蹴りを入れる。
思っていた以上のダメージに襲われて、千石はその場で固まる。スニーカーの硬い所が膝に丁度ヒットしたらしい。
「……っ! マジで、痛いんですけど! ちょっと、リョーマくん待って」
早歩きで駆けていくリョーマの後を、痛めた膝を擦りながら焦った顔の千石が追いかけていく。
「千石の様子、なんだか前と違うと思わない? 結構、いいコンビって感じがして来たんだけど」
「そうだね。どこがどうとは言えないけど、少し落ち着いた感じがするね」
騒ぎに取り残された菊丸と不二は、性格も背丈も違うデコボコな二人をそう称して見送った。
***
「……あれ、ここって?」
耳によく馴染がある音がしていた事から予想はしていたけれど、公園の中だというのに随分と本格的に作られたコートがあった。ペンキが乾いたばかり
らしいベンチからは、シンナーの匂いがする。ブルーシートに包まれた機材らしき物があちこちに放置してあることからして、まだ出来て間もないらし
い。
既に、その筋で有名になっているのかギャラリーも大勢集まっていて、白熱したラリーが二面もあるコートで繰り広げられていた。
「そ、ストリートテニスが出来る所。最近、出来たばかりで穴場みたい。千石さんも、やってみれば? 運が良ければ、弱い人もいるかもしれないしね」
淡々とした調子で立て板に水って感じで話をしているけれど、千石の事が貶されているのは明らかだ。
「なーんか、オレの実力を著しく誤解してないかな?」
横目でちらりと見て、リョーマに小さく抗議をした。
「だって、現にアンタ弱いじゃん。俺に勝ったことあったっけ?」
千石の非難をさらっと流して、一つだけ空いていたベンチの上に荷物を置く。上着を脱いで、跪いて靴紐をしっかりと結び直している。その姿を後から黙っ
て見守りながら、千石もその近くにカバンを置いた。
ほんっと、テニス好きだな。人の話とかただでさえ聞いてないのに、テニスに集中し始めると全く聞いてないし。
夢中なリョーマを見ているだけで、微笑ましい気持ちになった。
一際、人の視線が集まる一角がある。何気なくそちらに視線を走らせると、中心にいる人物と眼があった。
あれ、氷帝の跡部くんだ。こんな所にも、来るんだ。
山吹と青学がある中間地点にある公園なので、氷帝から来たと考えると随分と遠征だ。
案外、新し物好きなんだな。ジュニア選抜の時に窺い知れなかった事を知ったなと思って笑おうとしたのに、身体の調子がおかしい。跡部を見ていると、ぐら
り
と視界が赤く歪む。まるで、リョーマと出会った時を思い出したかのようだ。
なんだろ?おかしいなと、口内だけで自問自答を繰り返す。
ベンチの縁を持って身体が崩れ落ちるのを防ぐ千石の姿に、試合に眼を奪われているリョーマはまるで気づいていない。
千石が動くよりも先に、当の人物の跡部が目の前に姿を現す。喘ぐ呼吸を落ち着かせながら、跡部の姿に焦点をあわせると懐視感におそわれる。
他校の顔馴染に会ったというだけではない特別な感覚。これは、リョーマくんを見つけた時とやっぱり同じものだ。
「今回は、アイツか? テメェとの腐れ縁も、いい加減しつこいな」
つきあっているのかと問うている訳ではなく、確認するような跡部の態度でそれを確信する。
「あ……、跡部くんって、もしかして?」
気持ちだけが先走って、上手く言葉にならない。
「ああ。お察しの通りの存在だ。いい加減、俺までおまえ等に巻き込むんじゃねーよ。懲りない奴だな」
試合を見る事に夢中なのか周囲の状況に気がついていないリョーマの顔を、横から眺める。いつ見ても変わることのない千石の間の抜けた顔に視線を戻して、
ち
らりと皮肉気な笑
みを寄越した。
跡部くんは、別れを繰り返すしかない俺達を見守る傍観者だ。
どうして、彼が毎回俺達と同じタイミングで現れるのかはわからない。そのことに、意味がある
のかすらも。ただの顔馴染。それだけでは、言い切れない仲でもある。唯一、俺達の元からの関係を知っていてくれる同士でもある。
「そんなこと言われても、俺もよくわかってないから。……あの、ごめんね」
どんなことを言えばいいのかわからなくて、困ったように跡部の顔を何度か見直して、ようやく小声で言った。
それを聞いても特に意に介さず、リョーマの方へと千石の視線を誘導する。
「……知ってんのか?」
言葉には出さない残りの問い掛けに、千石は無言で頭を振った。
「そうか」
何度目かの因縁に思いを巡らすように、跡部はそのまま押し黙った。
「千石さんの知りあい?」
興味をひく試合が終わったので、ようやく連れの千石の方へリョーマの視線が戻って来る。見慣れない人と一緒にいるのを見て、リョーマの黒目が少し大きく
な
る。
「うん。そういうものかな。氷帝の部長をやってる跡部くん。ジュニア選抜で、一緒になった事があるんだ」
色々考えた結果、結局は無難な説明に落ち着いた。
「じゃあ、この跡部って人強いの?」
リョーマくんってば、好戦的過ぎ。過去の思い出が蘇って来て、千石はこっそりと忍び笑いをする。
笑われている気配を感じたのか、それとも答えるのが遅いからか、リョーマに軽く睨まれる。これ以上機嫌を損ねないように慌てて答えようとしたら、会話を
聞
きとがめた跡部に口を挟まれた。
「当前だ。その制服、青学か? 所詮、手塚以下なんだろ」
正面からリョーマの姿を捉えて、太陽の輝きを背にして悠然と見下す。
跡部くんは、こういう挑発的な態度がすこぶる似あうな。あー、リョーマくんもだっけ。
自分にそういう甲斐性がないのでたまに憧れるけど、平穏な方がいいと思う。千石がぼーっとしている内に、二人の話はどんどんと過激な方向に進行してい
く。
「ふぅん。それが口先だけじゃないんなら、俺とやろうよ。ラケット持って来てるんでしょ?」
「ここにいる奴等を全員倒せたら、考えてやってもいいぜ」
淡い茶色の前髪を指でかきあげて、悠々とした態度でリョーマを挑発する。
コートにいる男達にさっと眼を走らせた後、リョーマは隣にいる千石の顔を確認するように見据えた。
「でも、今日はいいや」
手早く荷物をまとめて、千石の右手を強引に引いた。
「あ、うん。いいの?」
「いいから」
状況が読めずに途惑っている千石を、リョーマは有無を言わせず強引に引っ張っていく。
「また機会があったら、相手してあげるよ」
「小さすぎて、今度会ったらわからねえかもしれねーけどな」
リョーマと跡部の物騒な別れの挨拶を聞いて、千石は繊細な神経を一人ですり減らした。
「跡部くんがこんな所に来るなんて、滅多にないと思うよ」
公園の入口までずるずるとリョーマに引き摺られながら、千石はもう一度言った。
「別に……。今日は、いい」
歯に衣着せぬリョーマにしては、珍しく歯切れが悪い態度だ。
「なんで? まだ日も明るいよ」
「ウルサイな! アンタの顔色が悪いのに、放っておけって言うの?」
それにそんな人に見ていられたら、俺の気分も悪くなるし……。
部活の時を思い出して、ほんのり顔を赤くしながらリョーマはぶつぶつと呟く。
「──そんなに、顔に出てた?」
完璧に隠していたつもりだったのに、ばれていたなんて。もっと気をつけないと駄目かもしれない。
自分の考えに浸っていた所為で、リョーマの赤くなった顔を千石は見過ごしていた。
「出てた。今すぐ死にそうだった」
「もう大袈裟だなぁ。リョーマくんのオレへの愛を感じて、嬉しいけどさ」
へらへらと浮かれた調子で、千石がリョーマの肩に馴れ馴れしい態度で手をかける。
「今日は、俺がアンタのこと送ってくから」
愛の部分はするっと無視して、千石を見あげて強引に宣言する。半端な男より頼れる態度で、胸を張る。
「平気だよ? 超元気だし」
「俺のわがままにつきあわせたんだから、それくらいさせてよ」
「じゃ、家の途中まで、リョーマくんに送ってもらおうかな。オレ達、なんて言ったって恋人同士だもんね!」
幸せいっぱいという表情で千石はにっこりと微笑んだが、リョーマの次の一言ですぐに現実に引き戻される。
「まだ、仮のだけどね。一応、恋人だから面倒みてあげる」
千石の上機嫌を台無しにするように、リョーマは唇を引きあげてニッと笑った。
「えー! まだ仮だったの!?」
素っ頓狂な声をあげる。千石の方は、すっかり恋人のつもりだったのだ。
「当り前じゃん」
しれっとした調子で、千石の増長した態度を嗜めた。
──リョーマくんの特別に、また一歩近づけたかもしれない。
そうなることは別に運命でもなくて、この時代に生きる千石の行動の結果次第。そう思えただけで嬉しくて、唐突に泣きたくなる。
目にゴミが入っちゃってとべたな嘘をついて立ち止まって、ゴミを流してでもいるかのように瞬きをし、瞳から数的、雫を零す。
様子を窺うリョーマに、気合を入れ直した完璧な笑顔で答えた。
彼が一緒にいるというだけで、日常の全てが愛おしくてならなかった。
新たに二人の過去を知る跡部さんが登場。彼は、その名の通りに傍観者です。清純の微かな心の支えです。
06/03/29 up