64. music


「テニスの振興に、歌なんて関係あるわけないじゃん。アンタさ、上手く騙されてる んだよ。 レッスン料とか持って来いとか言われなかった?それに、なんでキヨスミがやるの? それが一番よくわかんないんだけど」

レコーディングとCDジャケットの撮影が日曜日にあるから、その日の約束はダメと 言われたリョーマは、 理由が理由だっただけに驚いた。 明らかに、調子に乗らされたかなんかして、千石は美味い話に騙されているに違いな い。おだてられると調子に乗りやすい性格の千石なので、いつかそういう事があるんじゃないかと密かに案じていたら、これだ。やれやれと、肩を竦める。
月刊プロテニス協賛でCDを発売するんだと言われても、そんな怪しい話を信用出来 る訳がなかった。 テニスの大会があるのならともかく、歌なんて怪しすぎる事この上ない。

「各学校協賛だから、青学にも話が来てると思うよ」
「そんな話、誰からも聞いてないけど」
千石の前で訝しげに、リョーマは眉を顰める。 そんな話があるなら、部長は不確実な話だから言わなかったとしても、不二先 輩なら気軽に話してくれそうだし。
「リョーマくんには恥ずかしかったから言わなかったけど、オレね、既にCDデ ビューしてるんだよ。 だから、これがセカンドシングルなんだ。全然、怪しくない話なんだって」
信用性を増す話を思いついて、リョーマの顔の前で指をピっと立てる。
「ほら、リョーマくんの所にも取材が来るから顔位は知ってると思うけど、 ショートカットのスポーティーな美人の芝さんと、え〜と…井上さんが担当なんだ よ」
女性の名前しか覚えようとしないんだなと、腰にあてられたクッションの位置を直しがてら隣に座っている千石を軽くちらっと伺うと、 リョーマに誤解されると不味いと思ったのか、「美人っていうのは単なる呼称だからね!リョーマくんが一番可愛くて綺麗なんだか ら!」と必死で言い募られた。
「そう」
(別に、そういうつもりで見たわけじゃないんだけどね。そりゃ、ちょっとはあったけど…)
意図せずに、恥ずかしい目にあった。千石から自然に顔を背けながら、鼻の頭をほんのり赤らめる。
「うん。顔は知ってる。よく来るしね」
「なんだかさ、売り上げも好評なんだって。だから、またオレにお声がかかったって わけ!いや〜、まいっちゃうよね」
えへへっといい気分で笑いながら、千石が後ろ髪をかいた。
ソファーから立ち上がって、机の引出しに 大事に保存しておいたファーストシングルを取り出して来て、リョーマの手 に渡す。
渡されたCDのパッケージを、思わずまじまじと見てしまう。
山吹のユニフォームを着た千石の姿が、ジャケットになっている。それはいいのだが、問題は顔だ。
(なに、このウインク?いちいち、可愛子振んなよ。こんな本気の顔までしちゃって さ、超乗り気だったんじゃん)
オレ、超やる気デス!みたいなオーラが、そこから激しく伺えた。なんだか自分の知らない内にというのもあって、なんとはなしに面白くないものを感じる。
無言でソファーから立ちあがって、CDコンポにCDを聞けるようにセットした。

「…これ、本当にアンタが歌ってんの?意外と、上手いじゃん」
普段カラオケでしか聞かないのと、千石が恥ずかしい替え歌を歌うのにリョーマがキレて以来行ってなかったし、歌が上手いとも特に感じていなかったが、千石 の声オンリーで聞くと、意外と聞き応えがあった。
「でしょでしょ!千石くん歌上手ねーって、レコーディングスタジオでも大評判だっ たんだ」
リョーマに褒められたのが嬉しいのか、レコーディング時のエピソードをリョーマの方に身を乗り出してぺらぺらと語りだす。
「へえ…」
聞いた時には確かに上手いと思ったんだけど、千石本人の口から聞くと嘘っぽく聞こえた。
(もしかして、これが俗に言う惚れた欲目って奴なのかも…)
こんなことを考えてしまった自分が恥ずかしくて、邪魔な千石を足で蹴っ飛ばして退かして、ソファーに顔から突っ伏した。
うっかり他人に話して恥ずかしい事になるのも嫌だし、千石に話しても煩く言われるだろうから、今思った事は黙っておくことにした。千石に関しては、調子に 乗ったりウルサイ事があるので、こういう事がついつい多くなる。
「あ、そんなに心配なら、リョーマくんも来なよ。…いやいや、オレが心細いん で、どうか一緒に来てクダサイ!」
足蹴にされるのはいつものことなので、ソファーから床のラグに落ちた格好のまま、上にいるリョーマの顔色を伺いながら下手に出て頼み込む。
「しょうがないな。行ってあげるよ」
状態が元に戻ったリョーマは起き上がって、ソファーに座りなおした。一応まだ詐欺という可能性もあるので、千石に着いていくことにした。
(オレの雄姿を見せたら、リョーマくんがまた惚れ直しちゃうかも!歌には、自信があるんだよね〜)
ぐふふっと、千石が肩を震わせて不気味に笑い出す。千石の脳内は、妄想のお花畑がいつで も満開らしい。
「じゃ、日曜日の午前十時に編集部の最寄駅で、待ち合わせでいい?先に、芝さん達と会ってから、スタジオに移動らしいんだ」
顔を元の正常な顔に戻して、くるっとリョーマに振り返る。
「いいよ」
近くに置いてあった月刊プロテニスの雑誌を読み直していたリョーマは、そう気軽に答えた。




迎えた日曜日。
千石の髪型はいつもより気合が入って整えられている上に、のど飴まで舐めてレコーディングに向けての準備はばっちりな様 子だ。
対するリョーマはというと、先週の約束した内は覚えていたが、なんで日曜日の朝からこん な所にと、身体全体から気だるさを見せていた。
月刊プロテニス編集部とプレートがついているガラスのドアを開けると、待ちかねて いたのか直ぐに千石に声がかかった。
「やあ、千石君。よく来てくれたね。…あれ?越前君じゃないか!千石君の付き添いかい?」
「井上さん、こんにちは。リョーマくんも一緒にいても、い いですよね?」
如才なく笑顔で挨拶をして、千石清純惚れ直し計画の為に井上の承諾を得ようとする。
「ああ、もちろんいいよ。参考になるかもしれないしね」
「あら?千石君、今日も決まってるじゃない!」
「そうですか〜?芝さんに会うから、気合入れて来たからですかね」
さっと後から登場した芝は、動きやすい白の開襟シャツ、ベージュの膝丈のスカートで、働く女性の色気を明るく漂わせていた。
「千石君は、ほんとにいつも口が上手いんだから。そうやって、その口で女の子も泣かしてんでしょ?若いからって、遊びすぎちゃ駄目よ」
肩をトンと叩いて、軽い冗談という感じで嗜めた。
「へーぇ、千石さんって、そうなんですか。俺、知らなかったなぁ」
リョーマの声は、淡々としていて冷たい。早くも千石の計画に、暗雲が立ちこめようとしていた。
「ないですって!そんな事、あるわけないじゃないですか。オレは、本命の子に一途な男なんデス!」
「まあ、本命なんていつの間に作ったの?どんな子?」
「芝、その辺にしとけよ。もうそろそろ時間だろ」
井上の助け舟に救われた千石は、徐々に不機嫌になるリョーマを宥めながら、レコーディングスタジオへと車で移動する事になった。


走る事、30分。井上が運転する車は渋滞に引っ掛かることもなく、無事にスタジオに着いた。
機材の準備があるので、先にジャケット写真を撮影してからという事で、撮影用の部屋に千石とリョーマは案内されていた。
「CDのジャケット撮影用の衣装なんだけど、千石君はどっちがいいかい?」
「リョーマくん、どっちがオレに似合うと思う?」
井上に選択を任されたものの二つもあると迷ってしまう。ここは恋人の意見を聞こうと思い、千石はリョーマに選択権を預けた。
二つのマネキンに衣装が着せられていて、片方は白の上下のスーツで、中にフリルのシャツ。もう片方は、青と白のボーダーのVネックのシャツに、白のパー カー、 ブルージーンズにカラフルなベルトが付いていた。
どっちかと言われると悩んでしまうけど、昭和の爽やかアイドル系のどこか間違っている衣装より、普通に選ぶとしたらスーツだろう。だけど…・。
「あっちがいいよ」
リョーマが指したのは、白いスーツではない方だった。
変な虫がつくと、困るしと誰に言うわけでもないのに口の中でぶつぶつ言い訳しながら、あえて千石に似合 わない方を勧めた。
「俺のセンスもまだ捨てたものじゃないな。若者の感覚に、ちゃんとフィットしてるじゃないか。芝の奴、俺を見縊りすぎだぞ」
井上は、ニコニコ顔だ。つまり、この衣装はスタイリストが用意したものじゃなくて、井上個人が揃えたものらしい。頼りのきちんとしたセンスの持ち主の芝 は、レコーディングの打ち合わせでこの部屋にはいなかった。
だからなんだ…。その古臭いセンスに、リョーマはこっそりため息を吐いた。
「んじゃ、着てみるね!」
リョーマに向かって笑顔でヒラヒラッと手を振った後、スタジオの脇に簡単に間仕切りされて設置した着替えスペースに、マネキンから脱がせた服を持って千 石は入っていった。

五分も待たない内にその衣装を着て颯爽と現れた千石を見て、リョーマはどうしていいのか本当に解らなくなった。
当初のリョーマの予定では、それを着た千石は似合わない上に、ダサく見えるハズだった。
なのに、千石にはその衣装が恐ろしく似合っていたというか、自分の物としてさらっと着こなしていた。ブルーとホワイトのボーダーシャツ効果なのか、いつも の能 天気な顔に爽やかさまで感じられた。
そして思い出したくもない過去が、リョーマの脳裏にまざまざとフルカラーでリアルに蘇えってきた。
(…あぁ、セーラー服まで普通に着こなしちゃう男だったっけ。これ位、あれに比べれば平気なハズだよね)
セーラー服姿でパチっとウインクする過去の千石ビジョンを頭から消し去って、ははっと苦笑を零した。
「リョーマくん、どう?」
「千石君、よく似会ってるよ!選んだ甲斐があったってもんだよ」
興奮した井上がリョーマより先に感想を述べて、千石の背中をバシッと叩いた。
「やだな〜。痛いですって」
千石はそう言いながら、井上の手放しの賛辞にかなり気分が持ち上がっていた。
「…ま・まあまあなんじゃない」
それ以上は色々な思いがあったのでコメント出来なくて、リョーマは千石にくるっと背中を向けた。
そんなリョーマの姿に照れていると思ったのか、それを見ながら千石は、にま〜っと満足気な顔をした。

その後の撮影は、リョーマが近くで見ているからか快調に進んでいった。
リョーマ自身は、もはや諦め半分、暇つぶしも兼ねて千石の姿を見ているだけなのだが、千石の方はリョーマの熱い視線を受けていると思って、燃え上がってし まってい た。
「じゃあ、ここで軽くポーズを取りながら、笑顔で!」
カメラマンの撮影指示に、「は〜い」と会心の笑顔で応じていた。

「え?そっちにしたの…。千石君って、ある意味ものすごい逸材なのかもね」
千石が井上推薦の衣装でレコーディングスタジオに現れて、芝は初めてそれを着ている姿を見たのだ。
井上先輩のセンスの古臭さをカバー出来る千石君って、すごいかも。へえっと、感心の声を上げた。
芝の反応を見たリョーマは、同感だねと心中頷いてい た。
何度か歌う際の指導を与えられた後に、二回目にしてもうすっかり慣れた様子でレコーディングスタジオに千石が入って行く。
勘がいいのか、さくさくとレコーディングも順調に進んでいった。
スタジオの中で機材をいじっている人や、芝や井上まで千石の歌を聞いて満足そうに頷いている。
皆の好意的な反応を見てリョーマは初めて、千石が言ってたのはウソじゃなかったんだと思った。
セカンドシングルの方が、千石の雰囲気とも合っているような気がする。
いい歌かも…。小声で、千石の歌うのに合わせて口ずさむ。
そうしてガラス越しに眺めていると、千石の真剣にレコーディングに打ち込む姿に、久々に眼を奪われた。まったく千石の知らない所で、どうやら計画が順調に 発動したようだ。
(たまに、カッコ良く見えるんだよ、キヨスミって…)
そんな時の千石の姿は、誰も敵わないと思う。なんでだか知らないけど、きっとそうだ。
いつもそうじゃない所が、リョーマを飽きさせないのかもしれない。こんな千石の顔を見ているのは、好きだった。
まあ、普段の顔もそれはそれで、好きなんだけど。

リョーマが千石を見ながら物思いに耽っている内に、CDの収録は終了になっていた。
どうやら出来がよかったのか一発OKらしく、撮り直しはないらしい。
「ふぅー、緊張しちゃった。でも、一回で済んで良かった」
お疲れと、千石の健闘を称えて、スタッフ達が肩を叩く。ありがとうございましたと、スタッフの人に向かってお辞儀をしてお礼を言いながら、すすすっと リョーマの元に寄って来る。
にこにこしている千石を見て、言って欲しい事は大体解っていた。
まあ、ちょっと位いいかと、リョーマは自分の心に妥協する。
「アンタにしては、上出来なんじゃない。俺は、いいと思ったよ」
公衆の面前で歓喜の表情で抱きついてこようとする千石をするっとかわして、ノドかわいたんじゃない?と言って部屋を出て飲み物を探しに行こうとしたら、気 のいい井上がリョーマと千石に用意しておいたジュースを渡してくれた。
ちょっとほとぼりを冷ましたかったのにと思いながら、井上にお礼を言って受け取った。
大きな棚が置いてあって、その横に白い机とパイプ椅子が置いてある。 軽い飲食スペースが設置されている場所に、邪魔にならないように身を移した。リョーマの隣には、抱きつけなかったものの、リョーマに褒められた喜 びを噛みしめている千石が座っていた。
撮り終わったCDの調整をしていて忙しそうなスタッフの仕事振りを見ながら、後の撮りはメッセージだっけと、千石は話す内容を考えていた。あんまりいいア イデアを思いつかなかったので、後で井上に聞く事にしてそこで考えを中断した。
喉の渇きもあって一気にジュースをごくごくと飲み終えた千石は、出番もまだなようなので暇に任 せて近くにある大きな棚の中身に目をとめていた。
「このCDの棚って、もしかしていままで出したCDとか?こんなにあるんだ」
へえと感心した声をあげながら見ていると、あいうえお順で並べられているのか氷帝の跡部くんが右端にあった。ふむふむと指をあててカシャカシャ音を立てな がら順に見 ていると、えの欄で視線が離れなくなった。
「な・なにコレー!いつの間に!リョーマくんってば、オレに内緒でCDデビューしてたの!?」
引き抜いたCDを持って、リョーマに詰め寄った。いきなり興奮した声をあげた千石の方に、顔を向けた。
自分の顔がジャケットになっているCDを渡されたけど、まったく身に覚えがなかった。首を捻りながら、CDを開けて歌詞を見てみると、それには確かに覚え があった。
「しらない。…けど、これ歌った覚えはあるかも。音楽の授業中に寝てたら、補講で渡された課題曲だったんだケド。なんで、それがここに?」
なんで自分の知らない内に、CDになっているんだろと、そのことが不思議だった。
解ってなさそうなリョーマを直ぐに見て取った千石は、舌を出している竜崎の顔が見えるようだと思った。
(あの人金にがめつそうに見えるし、これでリベートとか入ってそうだな)
それを思って、不機嫌そうに千石は眉間に皺を寄せる。
リョーマくんに正攻法は通用しないと考えて、こんな手段を取ったに違いない。
(…可愛すぎるだろ、これ。絶対、隠し撮り写真に違いないよ。こんなに可愛くて不敵な笑顔で自然に映ってるなんて、まずないもん)
顔が幼いから、この写真を撮ったのは入学して間もない時期だと思う。写真を見て時期が解るオレってすごい、これは愛が成せる技だよと、ついつい自画自賛し てしまう。
(しかし、これが全国に出回っているなんて、なんてことなの!益々、ライバルが増えちゃうよ)
とほほと思いながらも、販売方法が通信販売だけでよかったと、ほっと胸を撫で下ろした。


そんなに気になるならあげるよと、井上からリョーマのCDをお土産にもらった千石は自宅で早速視聴していた。
曲自体のキーが高いんだけど、変声期前のリョーマくんはすんなりと歌いこなしていて、自然に耳に心地よく入って来る。
カラオケでリョーマくんがたまに歌うときは主に洋楽だから、日本語の歌を歌っているのは貴重だ。それになんと言っても、俺って普段話すリョーマくんが、歌 詞の中 で「僕」って歌うのまでツボで、すんごい可愛い!この歌を聞く度に、オレ悶えそう。
(こんなことを思ってる奴が、全国に何人いるんだ?心底数えたくないな〜)
ヘッドフォンをつけてリョーマに内緒で聞いていた千石は、外して首にかけたたまソファーにポスッと背を預けた。
何を聞いているのか好奇心に駆られたリョーマが、その首からするっとヘッドフォンを取って耳につけて見る。流れる自分の歌を聞いて、微妙な顔をする。
「恥ずかしいから聞くなよ」
ケースごとリョーマにCDを奪い取られた千石は、絶対に通信販売でまた手に入れようと思いながら、今更の注意をする。
「これが全国で通信販売されてるって、リョーマくん知ってた?オレから取り返した位じゃ、もう遅いって。あ〜、リョーマくんの魅力が皆にもっと広まっちゃ うよ」
うぅっと唸りながら、リョーマの身体に横からギュッと抱きついた。
「ゲッ!?それ、サイアクなんだけど」
「怪しいなと思ったらさ、リョーマくんこそオレに相談してよね。気がつけば、写真集とかまで出された後とかじゃ、遅いんだから!カメラの音に要注意だから ね」
そう言いながらも、最近のは無音で高性能の物が多いことを思い出す。自分でも写真嫌いなリョーマの写真を撮影する為にこっそりやっているので、こんなん じゃ気づ けないよと、頭を抱えた。
「オレ、リョーマくんの側から離れないから!」
くるっと身体を横に捻ってリョーマと向き合って、ダメって言ってもダメだからねと、高らかにボディーガード宣言をする。
「そんなのいつものことじゃん」
千石の顔を見てフッと笑うリョーマを自分の身体の方に抱き寄せて、チュッと軽い音を立てて唇にキスをした。

俺の毎日は、キミと共に自然にあって、いつかある未来の日曜日だって、やっぱりこうして一緒にいたい。
いつでもオレが考えていることは、キミのことだけ。こんなリョーマくんの顔が見られるのは、オレだけ。…・って、ことにしておきたい。
窺うような千石の目と合った瞬間、二度目のキスの予感を感じたリョーマが自然に目を閉じる。
それを見てニッと笑った千石は、リョーマの肩に手をかけながら、一度だけでは終わらなくなるキスを当然のように仕掛けた。


リョーマのアルバムデビューとデュエットCDの企画が、竜崎と井上の間で着々と実行に向けて進んでいる事や、手塚まで巻き込まれることも、不二までその話 に一枚噛んでいることも、まだ二人は知らない。
千石が井上に会った時に、何気なく聞き逃していた参考になるかもしれないというのは、リョーマのレコーディングに向けての事だった。
この話を知るほんのしばらくの間は、二人は幸せな恋人のままでいられるかもしれない。






千石清純第二段CD発売の捏造秘話です(笑)
月刊プロテニスの商売の上手さに、大注目ですね!スミレさんのイメージは、なんとなくあんな感じです(失礼だよ;)
CDの発売順序も、私によって勝手に変更されてますので、ご注意あれ。

05.09.09 up→06.04.30 改稿 up

BACK