42. 海


『──番組の途中ですが、緊急ニュースをお知らせ致します。自称桜吹雪彦麿と名乗る桜吹雪容疑者が──、賭博及び……』

昼ドラを見終わった後も適当に流していたテレビに、眼がクギヅケになる。リモコンで音量をあげようとしたら、ごちゃっと汚れた部屋の中にぱっと見で見つ からなかったので、本体の音量を手動で急いであげた。
(……これって、青学が招待された船だ。リョーマくんは、どうしてるんだろ)
徐々に、事態の深刻さが千石に伝わっていく。
(賭博って事は、テニスの親善試合自体も嘘って訳で…。青学の皆は、いいように使われたってこと!?)
緊急特報のニュースを見てから、千石はいてもたってもいられなくなる。その心配を更に煽るのは、何度かけても繋がる事のないリョーマの携帯だった。
リョーマくんが行く前から、嫌な予感がしてたんだよ。こんなに心配になるなら、オレも無理言って一緒に行けばよかった。
頭を抱えながら、うーっと呻き声を発する。
繋がらない携帯を操作していて、ふと浮かんで来る名前があった。
こういう時に、お役立ちしそうな人といえば、その彼しか思い浮かばない。あんま頼りたくないんだけどなぁ。
とても気が進まなかったが、リョーマくんの無事を確める為だしと気力と気合を振り絞って、番号を表示してボタンを押した。

「──俺だ。何の用だ?」
数秒もせずに出た電話の相手に、目の前にいたら縋りつく勢いで千石は頼み込む。
「跡部くん、いまどこにいんの?」
「てめぇなんかとそんなこそばゆい会話は、したくねえんだが、…マリーナを目指して車で移動中だ」
耳に携帯を挟み込みながら窓に眼をやると、順調に車が流れている。この分なら、なんとか間にあうなと跡部はほくそ笑んだ。
「お願いだから、オレも一緒に連れてって!青学の事件の為に行くんだよね?」
「なんで俺が、てめえなんかを一緒に連れて行かなきゃならねえんだ。そんな義理は、一切ねえな」
今にも電話を切りそうな跡部に向かって、普段からよく回る口をフル回転させて千石は必死に捲くし立てた。
「ええっ?いいでしょ。同じJr選抜合宿経験者じゃん。それも二回も!友達だし、お願い!リョーマくんのことが心配なんだよ!」
喧しい千石の声に柳眉を顰めた後、跡部はニヤリと笑う。
「俺様の言う事を聞くなら、連れて行ってやってもいいが、どうする?」
「リョーマくんだけは、絶対あげないよー?」
跡部が言いそうな事を先回りして、これだけは譲れないからねと千石は意見を述べる。
「しょうがねえな。妥協してやる。一回くらい貸してくれたら、考えてやってもいいぜ」
知ってるか?奴等は拳銃を持っていて、青学の奴等はテニス賭博に利用されていたんだとよ。
千石の弱みに付け込んだ要求をしてくる跡部。まだ世間に知られていない情報まで危機感を煽る為に追加するという手の込んだ技だった。
(うぅっ…。リョーマくんは、オレのモノなのに〜!跡部くんのゴウツクバリ!)
でも、連れてってもらえないと、リョーマくんの無事がすぐに確認出来ない。

──もしも、リョーマくんが怪我してたりなんかしたら…?

想像したくない出来事を否定する為に、激しく首を振る。
「オレも一緒で、絶対に一回だけだよ!あくまで、リョーマくんはオレの恋人なんだからね。その点は、承知しといてよ」
一度位なら三人というのもしてみたかったし、背に腹は抱えられない。リョーマくんの無事を確認することが最優先事項だ。この場合は、跡部くんに頼る以外 に他に道がないのだ。そう思った千石は、渋々承知することにした。
「リョーマが俺の事を気に入ったら、後の事は知らねえぜ。……ま、約束してやるよ」
思わぬ美味しい話が転がり込んできて、跡部はニヤッと笑った。

「おまえの家に、迎えをやる」と跡部に言われた数分後に、すぐに迎えの車がやって来た。
先に着いていた跡部と港で合流し、跡部が自分で操縦するヨットに乗り込んだ。
この時はリョーマのことしか考えてなかったので、ヨットが大きいこととか、なんで運転なんて出来るのと突っ込むのさえ忘れていた。
豪華客船と呼ばれていた船に近づくにつれて、何かが爆発しているかのような大きな破裂音が聞こえてくる。船の大部分から火が出ていて、黒い煙が盛大に立ち 昇っている。救命ボートが何台も周りに浮かんでいた。

「あぁー。リョーマくん、無事かな」
携帯で連絡を取って跡部が事態を冷静に把握している後ろで、リョーマがどこかにいないか目を凝らしながら、千石はしきりに心配を口にする。
「アイツなら、大丈夫だろ。おまえより運が良さそうだしな」
はらはらしている千石とは対称的に、跡部は気楽に返答する。負傷者が出たと言う情報は、届いてないからだ。
「うわっ!アレ、リョーマくんだよね。なに?あの男!リョーマくんと仲良く二人乗りで登場しちゃって!」
青学の部員達が乗っている船にリョーマの姿が見当たらなかったので、目を血走らせていた千石がそれを指差して叫ぶ。
「手に入れた情報によると、Ryoga Etizenって名乗ってるらしい。越前ってことは、リョーマの血縁じゃねえの?」
「なんだ、リョーマくんのお兄さんか…。よかった〜」
ほっと安心するが、海に落ちたリョーマが海の彼方へと消え行くリョーガを見ている視線に、普段と違う物を感じて焦りだす。
「跡部くん!リョーマくんを、早く船に拾って!」
「がたがたウルセエ男だな。…ちっ、しょうがねえな」
自動運転モードにしておいたのを解除して、青学部員とリョーマがいる救命ボートに近づく為に舵をまわした。

「リョーマくん!」
救命ボートに後3m位の距離に近づいた瞬間、千石は上に羽織ったシャツを脱いで鬱陶しそうに靴から足を抜いて、ジーパンのまま海に飛び込んだ。ボートのす ぐ側に浮かんでいるリョーマを目指して、泳ぐ。
「リョーマくん、どこも怪我してない?大丈夫?」
海の中だというのに、千石は感激のままにリョーマにぎゅうぎゅうと思い切り抱きついた。
大きくて重たい千石にしがみつかれた所為で、リョーマは溺れそうになる。ジタバタと暴れて、千石の腹を蹴ってようやく脱出する。
「バカっ!アンタの所為で、今死ぬ所だったよ!」
「ほんとに…、無事でよかった」
文句も耳に入ってないらしく、リョーマの無事を自分の眼で確認して、涙ぐんで今にも泣きそうな千石を見てリョーマもほだされる。
そんなに、俺のこと心配してたんだ。すぐに来られないはずのこんな所まで来ちゃって──。
落ち着きを取り戻した千石が自分の身体をゆっくりと抱き寄せるのをリョーマは大人しく待った。
千石は近くの跡部のヨットへとさりげなく移動して、リョーマの身体を抱きあげて上に乗せる。
「じゃあ、皆はまた後でね〜」
そんな勝手な一言を青学のメンバーに残して、跡部に出発を急かした。


「リョーマくん、海に入ってたから身体がべたべたしてるでしょ。シャワーしてきなよ。オレは、その後でいいからさ」
千石の申し出に、リョーマは素直に頷いた。
身体がべたべたするし、シャワーでもいいからあるなら使いたいと思っていたから丁度よかった。
「これ、タオルだって。着替えは、これね」
手際よく千石から手渡された物を受け取って、リョーマはシャワー室に消えた。

大体の進路を決めて、ヨットの操縦を自動運転モードに切り替えたので、跡部は船内にある部屋にようやく顔を出した。ヨットの中だというのに、充分に広い。 居住空間であるこの部屋以外にも、シャ ワー室と簡易キッチンがある。部屋の中央には、三人くらい余裕で寝れそうな大きなベットが置いてある。ベットの脇には、ワインクーラーまで用意されてい る。ヨットとはいっても、跡部のこだわりで選んだだけのことはある豪華さだった。
部屋を見渡すと、海に入って服が濡れたのでガウンを羽織っている千石だけが所在無さそうに部屋にいた。
「…リョーマは、どうした?」
「いま、シャワー浴びてるよ。オレも後で入ってからくるけど、先に始めたりしないでよね」
油断のない目つきで、跡部の様子ををちらっと上目遣いで千石は窺う。
「ああ、わかってる」
猜疑心を持っている千石に、鷹揚に頷いてみせた。そう言いながらも、跡部には待つつもりなんてなかった。

リョーマが渡されたガウンを羽織って出てくると、部屋に千石以外に跡部がいて、びっくりして目を見張った。
「じゃ、オレもシャワー浴びてくるから。リョーマくん待っててね。跡部くんもね!」
念押しするように何度も跡部に言って、千石はようやく部屋を出て行った。
「……跡部さんは、なんでいるの?」
濡れた髪の毛をごしこしとタオルで拭きながら、リョーマは不思議そうな目を向ける。操縦室にいた跡部に、リョーマは気づいていなかったのだ。
「俺様のヨットなんだから、俺がいるのは当前だ。おまえらを招待した桜吹雪って金持ちが怪しいと思っていてな。予想通りだったぜ」
「ふーん。そうなんだ」
座り心地が良さそうな大きなベットの端に、リョーマはちょこんと座った。
「おまえの兄貴、リョーガだっけか。どうだったんだ?」
「そうだよ。ちょっと、……懐かしかったかな」
跡部にはわからないような陰のある微笑を浮かべて、ここにはいない男を思い出しているのかぼんやりとした遠い眼をしている。
そんなリョーマが面白くないのと、そろそろ始めるかとベットにリョーマを押し倒した。
「なっ!いきなり、何すんだよ」
身体の上からどかそうとして跡部の厚い胸板を突っぱねようとしたのだが、びくともしない。
「おまえの恋人が、おまえのこと好きにしていいって、言ってたんだぜ」
抵抗するリョーマに、跡部はニヤッと意味深な微笑を浮かべる。
「……ウソ…だ」
思わぬ事を聞かされたショックで、リョーマの瞳が揺れる。
その隙を逃さずに、口づける。嫌がって顔を横に振ったが、逆に押さえつけられて口づけを深められていく。
悲鳴をあげる口の間から舌を入れて、頬肉の柔らかさを楽しんだり、歯列を舐ったりした後、無理矢理奥にある舌を引きずり出して密に絡める。
「…・んんっ…やぁ…」
振りまわそうとした手も軽々と一纏めにされて、リョーマのガウンを縛っていた紐が抜かれて、それで手を上の方に縛りあげられた。
上に開ききった無防備な脇を、跡部はそっと撫で擦る。うぅっとうめきながら、リョーマは嫌悪感で身体を震わせる。
ぷつぷつと鳥肌が立っていく白い腕。想像していた以上に、敏感な反応を返す身体に跡部は満足気に笑みを浮かべた。
まだ触れていないリョーマの幼い陰茎を観察する。特に反応を見せていない。淡いピンク色をしていて、エレクトさせたらどういう反応を返すのだろうかと、欲 情と好奇心にとらわれる。腹の下で勢いもなくまだ垂れ下がっているリョーマの性器に、手で刺激を与える。強張っていた身体が逃れようとしてまた暴れ出すの で、押さえつける身体に力を入れ直した。
「そんなとこ、さわんな。……あぅっ!」
強情な口を聞くリョーマの口を封じる為に、兆してきたばかりの性器に爪を立てた。その刺激で、ドロッとした先走りの液が爪の間から少し漏れてきた。
「キヨスミ、助けて!…キヨスミ!」
口が塞がれていないいまの内にと思ったリョーマは、この船にいる千石の名を大声で呼んで助けを求めた。
のんびりとシャワーを終えて部屋に戻ってきた千石は、目の前の刺激的な光景に眼を奪われる。
「リョーマくんったらオレには縛りなんてさせてくれないのに、ズルイよなぁ…」
のん気でバカなコメントをする千石を見て、怒りが込み上げてくる。
「なんなの!コレ。早くほどいてよ」
「りょーまくんごめんね。跡部くんと、ちょっと約束しちゃったんだよね」
頭をかいて、えへへと白々しく笑う千石。リョーマの怒りは、高まるばかりだった。
「でも、俺がいない内に手を出すなんて、ルール違反だよ。跡部くん」
非難するような目で、跡部を見る。
「んなもん、知ったこっちゃねえな。ここまで連れてきてやったんだから、もういいだろ」
「一回だけリョーマくんとってことなんだけど、たまには気分も変わっていいよね?」
「絶対、やだ!」
即座に、否定の為に首を振る。
「だって、リョーマくんのことがすごく心配だったんだ…。こういう時に、跡部くんしか頼る人がいなかったしさ」
心底参っていたという風に、千石は眉を顰める。
(ここで、ほだされちゃダメだ。キヨスミは、俺を取引に使おうとしたんだから)
頑として首を縦に振らない強情なリョーマに近づいて、千石はベットに腰を下ろす。リョーマの全てを剥き出しにされた身体を見て、おもむろに瞳を細める。
「ふぅん。跡部くんの愛撫で、もう感じちゃってるんだ。リョーマくんのエッチ」
「違うっ!」
「んー。じゃ、この手につく物はなーに?」
シーツの上に滴り落ちそうになったリョーマの先走りの液を人差し指で取って、その指を口の中に入れて美味しそうにペロッと舐める。そのままリョーマに覆い かぶさるように、キスをする。味を確かめさせるように、唾液を次から次へと送り込んでくる。動けないように顔を固定されているリョーマは、それをそのまま 受け入れるしかなくて、少し苦い唾液を全て飲み込む羽目になった。羞恥で、顔が赤く染まって来る。
「………もうやだ。はなして」
「ダメ。リョーマくんがイイって言うまで、ヤる。オレ、リョーマくんのことすごーく心配してたのにさ、一通もメール返してくれなかったよね」
「そんなの知らない。それに、そんな暇なかっ……ひゃっ…あぁっ…」
全く構えていなかったリョーマのものを、跡部が口の中に含んで舐め出したのだ。横の物も一緒に巧みに刺激されて、直接与えられる刺激に堪らなくなる。
「ああぁ……、やめ…て」
こんなに可愛い声だして、オレじゃないのに感じてるんだ。そりゃ、三人でやるって言ってたけど。割り切れていようと、嫉妬するものは嫉妬する。
「なんかジェラシー感じちゃうな。リョーマくん舐めて。痛いのは、やでしょ?」
声をあげるリョーマの口の中に自分の指を入れてじっくりと濡らした後に、跡部の作業の邪魔にならないように位置を変えて、いつも自分を受け入れてくれる蕾 をおもむろに探った。まだぴったりと入口は閉ざされている。
足を大きく押し開いて濡らした指をつぷっと一本入れると、すぐに締め付けるように絡みついてくる。流石にまだこなれてないので、きつい。根気よく慣らした 後に次の指を入れようとしたら、それより先に跡部の指が入れられた。
「ちょっと!」
抗議をしようと振り仰ぐと、唾液とリョーマの白濁で濡れた跡部の唇が目に入って、千石は言葉を失う。イク寸前で放り出されたからか、リョーマは切なそうに あくあくと声もなく喘いでいる。
ムッ、テクニシャンぶっちゃって、やーな感じ。千石は、こめかみに青筋を立てた。
跡部にはすっかりそんなことはお見通しのようで、舌で口の周りを綺麗に拭った後、ニヤッと笑われた。

片方が指をくの字に曲げたかと思うと、急に強く突かれたり、中で不規則に動きを変える二本の指に、リョーマは翻弄される。
「……ぅっ…あ、あ、あ!あっ…あん…っく……」
眉間を顰めて、二人からの快楽の責め苦を堪える。
親指と人差し指でまだ立ち上がっていない胸の頂きをくにくにと片手間で弄くる。続けている内に、ぷくっと先が尖って来た。伝わってくる手の感触でわかっ て、千石は嬉しくなる。
中を弄る手はそのままに顔を伸ばして口をつけて、犬が母親のミルクを吸うようにちゅうちゅうと音を立てて尖った部分を吸う。
快感が凝縮された部分をきつく吸われて、限界まで張りつめた部分が溢れていくのを感じた。
「ぁン…・んんーっ……ん……いあぁっ!」
やにわに、放置されていた右側の乳首に齧りつかれた。そんな所を噛まれてはたまらない。二人に押さえつけられている身体を跳ねさせて暴れる。ようやく解放 された乳首は、ジンジンと痺れるような痛みを訴えてくる。左の乳首より、赤くなっていた。
涙目になったリョーマを見て、千石は跡部を叱る。
「リョーマくんのこといじめちゃだめって、最初にオレ言ったでしょ?」
自分がリョーマをいじめるのはいいけど、跡部がいじめるのは許せないのだ。千石が狭量なのではない。恋人として、当然のことだ。
「そうか。リョーマの方は、喜んでるぜ」
さっきより反応して、シーツの方にまでじゅくじゅくと液を溢れさせているそれを指す。
「フン。しょうがねえな」
噛んだそれを労わるように、口の中で飴だまのように転がす。噛まれたことでより鋭敏になっている神経が熱い口内で、ダイレクトに刺激される。争うように千 石も再び口をつけて、軽く甘噛みをしてから舌で宥める。それを何度も繰り返す。
「ぅっ…あぁ…やんっ。……あうっ」
ふいに、びくりとリョーマの身体が跳ねる。撹拌されてぐちゅぐちゅと厭らしい音を立てるようになった蕾の中に、跡部が先にもう一本指を入れて激しくかき混 ぜたからだ。水揚げされた魚のようにリョーマがぴくぴくと跳ねて、一際強い反応を見せる。
勝ち誇ったような笑みを見せる跡部に対抗して、千石も合計で四本目の指を入れて自分だけが知っているリョーマの感じる所を巧みに突いて鳴かせる。
「あぁっ!…っふ…ん…だ・め…、動かす…な!…いやぁっ」
リョーマの反応と指の自由に動く様子からして、そろそろこなれた頃だろうと判断をして、千石に視線を送る。
「そろそろ入れてもいいんじゃねえか。俺が先でいいだろ」
「しょうがないな。優しくしてあげてよね」
「そう何度も言わなくても、わかってる。俺様をおまえみたいなヘタクソと一緒にすんじゃねえよ」
跡部の過剰なまでの自信に、千石は苦笑した。
リョーマの中から指を引き抜くと、拡張されていた蕾が閉じる前に、跡部はぐぐっと力を入れて先端を中に押し入れた。
「はぅっ……。あぁっ…いっっ……」
指とは比べものにならない質量と体内をずずっと埋めつくされていく感覚に慄いて、リョーマは思わず震えた。中で感じることがわかっていても、最初は痛いし 怖い。ましてや、相手はいつもの千石ではない。
ぎりぎりと内壁が自分のものを締めつける感覚を楽しみながら、くっと跡部は眉間をしかめる。
「少し緩めろよ」
「…知ら…ない…。も…、ぬい……て」
嫌々と、リョーマは苦しそうな顔で首を振る。
「跡部くんってば、全然なってないんだから。ダメだなぁ」
リョーマの下唇を舌で舐めてから、チュッチュッと小鳥が啄むようなキスを何度かしてから、優しく舌と舌を絡ませる。
下半身の方から意識がそれたお陰か、だんだんと内部も緩んでくる。
それを逃さずに、跡部は腰を引いたあとに奥まで叩きつけるように抽送を開始する。癖になりそうな締めつけだ。中ですぐに搾り出されないように力を入れなお した。
繋がりあっている口の中でかすかにリョーマの喘ぐ声がするが、千石は声を出させないように口の中に吸い込んだ。
「ふっ…ゃぁ…ぁ…」
不明瞭なリョーマの声が跡部の耳に届く。
「声出させろよ。聞こえた方がそそられるだろ」
跡部は不機嫌そうに、千石にがなりたてる。
ほんとに我が侭なんだから。オレの恋人だっておわかり?そう思いながらも、絡めていた舌を解いてリョーマの口を解放する。
「はっ…ぁん…ぅうっ」
自分をじっと見て反応を楽しまれているのが嫌なのか、リョーマはしきりに声を押し殺そうとしている。
それに気づいた千石が跡部に目で合図を出すと、察したのか中に入れたものが抜けないようにリョーマを押さえこんだままあぐらをかいた自分の上に座らせるよ うな体位に変わる。
より深く体内を貫かれて、苦しい。暴れれば暴れるほどリョーマが抵抗した力も加わった上に自分の体重も手伝って、ぐぐっと奥深くに跡部を迎え入れて沈んで ゆく。まともな思考が飛んでいきそうだ。頭の中で、赤と黒がちかちかと交互に瞬く。
跡部が背後から突きあげると、リョーマの上を向いた性器もゆらりと揺れる。先端からは、排出する瀬戸際まで近づいているのかとろとろと液が際限なく少しづ つ溢れ出している。誘うように赤く熟れきった乳首も目立っていた。それは後からじっくりと可愛がってあげることにして、弄りやすくなったのでリョーマの下 半身の前に膝をついて千石は顔を埋める。
シーツに吸収される前に舌を大きく広げて、つーっと性器に舌を這わせて下から舐めあげていく。舐めても舐めても、キリがないくらいだ。舌先を尖らせて、穴 の中をつんつんと悪戯に刺激する。
「最高に、気持ちよくさせてあげる」
千石は口を大きく開けてリョーマのものを迎え入れて、唇を窄める。リョーマに動くつもりがなくても、跡部が動けば自然にリョーマの身体も動かされて、千石 の柔らかい喉に鋭敏な部分が擦れて、腰から溶けていきそうなくらい気持ちがいい。外からと内からの激しい責めに、リョーマも耐えられなくなってきた。
「あ、あっ、あぁん!…はぁっ…うんっ!あん…もっ……ら…め…」
声を堪えようとするが、もう無理だった。口の端から、唾液が零れる。
リョーマの首を背後から捻じ曲げて唇を奪い、唇のまわりに溢れた唾液を跡部は舌で丹念に拭っていく。
「…あっ…やぁっ…はなして!…………っ!」
身体が急に捻られたことで思わぬ部分をぐいぐいと刺激されて、つかまれている前の部分も自分で強引に刺激を得ようとして擦りたてたようになって、千石の口 の中に堪えきれず射精していた。吐精した勢いで、中にある跡部のものを絞り込むようにぎゅうぎゅうに締めつけていた。
急な締めつけに耐えられなかった跡部 も、低くうめくような声を発してリョーマの中に精を放った。
中に出されたものが奥まであたるのを感じながら、リョーマは呼吸を落ち着かせながら閉じていた瞳を開いた。
やけに爽やかな笑顔を浮かべる千石と目があって、知りたくもない嫌な予感をリョーマは感じていた。
「次は、オレがリョーマくんのことを、たっぷり可愛がってあげるからねv」
「ふざけんな!嫌に決ま…あぁん」
一度イったリョーマの身体は、ひどく感じやすくなっていた。どうしても出てしまう声を少しでも抑えようと努力するくらいしか出来ない。
自分の出した精液が滑潤液代わりになったようで、すぐに復活した跡部が自在に動いている。動かす度に、結合部からぐちゃぐちゃと粘着音がして、中に放った 液体が蕾が捲れあがる時に溢れ出て来る。
「まだまだ、こんなもんじゃ満足出来ねえんだよ」
しれっとした顔で跡部は言い出して、リョーマの身体を引き寄せる。
「だって、一回って言ったじゃん!もう返して」
「一回だろ。この機会のことを指して、一回って言うのが普通だろうが」
「ヘリクツだよ、そんなの!」
段々、子供のような言い争いに発展している。ケンカしてもいいけど、せめて俺を解放してからにして欲しい。まだ縛られたままの腕が汗をかいた所為で痒い し、擦られて痛い。
(ハードな試合をこなした後に、なんで俺がこんな目にあわなければならない訳?俺が心配なら、家で大人しく待ってろよ)
ラッキー千石とつきあってからいいことがあったかなと、リョーマは自分にアンラッキーを運んで来た原因を考えていた。
静止しているつもりでも、そこは海の上。ヨットが揺れると、自然と身体も動かされる。小刻みな振動が、まだ繋がったままでいる跡部越しに伝わって来る。治 まっていない熱に火を点けられて、リョーマは小さく甘い声を連続して漏らした。
その声を聞いて、二人のケンカがピタリと止む。

────二度目の嫌な予感を、感じたくもないのにリョーマは感じていた。






テニ映画の千リョ+跡部な話。清純の方が恋人歴が長いので、りょまの身体には当然詳しいです。
他の誰にも抱かせたくないとは思っていても、そこはお年頃。少しは興味があるんじゃないかなと言うことで。

06.05.08 up

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